「図書館の神様」を読む ― 2006-06-04 11:13
ありふれたことを言うんだろうなぁ、表現が読者受けを狙ってあざといんじゃないか?と、うかうか読んでいると思わず彼女の世界に引き込まれてしまう本。瀬尾さんの「図書館の神様」はそのような本だ。
高校時代までバレーボールひと筋に生活してきた主人公清(きよ)は、ある事件をきっかけにバレーボールをやめてしまう。小さな、しかし、深い心の傷。いつもいつも思い出すものではないけれど、思い出すとシクシク痛むような傷だ。
彼女は、大学卒業後、地方の高校で国語講師になり、望みもしないのに文芸部の顧問となる。文芸部の唯一の部員である垣内くんは、彼女に彼独特の表現方法で文学を紐解いていく。
この本はGirls Meet Boysの物語でもある。
彼女と同じように心の傷のある垣内くん。わがままで、でも繊細な不倫相手の浅見さん。センスの悪い彼女とばかりつき合う弟の拓実くん。同僚の体育講師で彼女を励ます松井さん。
彼らとともに彼女は、成長していく。
いやな人は出てこない。でも、いやな人ばかりがまわりにはびこるのは、じぶんが負のエネルギーで引き寄せているかもしれないのだ。「図書館の神様」というユニークな書名も、周到なストーリーの展開で「神様」の意味がよくわかるようになっている。
平易な文章だけれど、凝縮されているものは多いという本です。
瀬尾 まいこ
マガジンハウス (2003/12/18)
売り上げランキング: 18,139
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そう、文学はおもしろい!神様のいる場所
しあわせな放課後
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