異世界と夜2016-11-09 18:14

世の中にはずるい人、姑息な人、他者を批判するのに汲々としている人が多い。
もちろん自分自身だってホメられたものじゃない。そんな人と関わり合うのは時間の無駄とわかっていてもムカつくときはあるし、気分を害するときも多々ある。

そんな時は異世界という存在が私を救うように思う。

最近再読した村上春樹の「レキシントンの幽霊」には孤独と日常生活の軋轢が静謐な文章で描かれている。いまさらながらに心が落ち着いた。
レキシントンの幽霊 (文春文庫)

村上春樹作品に対する批判としては
・ストーリー性がない、意味不明に終わる。
・主人公のナルシストっぷりが気持ち悪い。
・ラノベを長編小説にしたようなもの
・日本以外で人気があるのはソフトなポルノ小説として読まれているからだ
などなど、なかなかに手厳しい(苦笑

でも、村上春樹作品は私の心の深いところに確かに届いている。

村上春樹は「村上さんのところ」で
村上さんのところ コンプリート版

「電車等でマナーを守っていない人に遭遇すると、毎回、猛烈な怒りが湧いてきて、目的地に着く前にぐったり疲れてしまいます。

なぜ彼・彼女達は、あんなにふてぶてしいのでしょうか?

ー中略ー

殺意に似た怒りを感じてしまう私に、何かアドヴァイスをいただけたら、助かります」

という質問に

「僕らは異界に生きているのだと思うことです。そういう人たちが普通であって、僕らの方がエイリアンなのです。僕らはその異界に、たまたま場所をもらって住まわせてもらっているのです。そう思うと少し気持が楽になりませんか?ならない?困りましたね。」

冗談めいた回答だけど、意外と重要なアドバイスだと思う。

村上作品はパラレルワールドや異世界を作品の軸とすることが多い。
リアルや日常生活だけに軸を置くことは、現実的に見えて実は貧相な生き方ではないか。私たちは「時の旅人」としていつか平等に死んでいく。だからこそ自分の中に異世界を取り込んでおくことが、世間や人に右往左往されない世界を構築してくれるだろう。

「レキシントンの幽霊」についで森見登美彦新刊「夜行」を読了。
夜行
森見氏、いちじスランプに陥って、連載をストップしていたけれど復帰して次々と作品を発表されるようだ。

魅入られる如く、読み入ってしまった。

「今こうして自分が夜をさまよっているとき、どんなに遠い街も同じ夜に包まれて、膨大な数の人々がそれぞれの夢を結んでいる。この永遠の夜こそが世界の本当の姿なんじゃないだろうか。
そのとき「夜行」という言葉が頭に浮かびました。」


作品中のこの文章が異世界への扉となっている。

ダヴィンチで森見登美彦特集が掲載されているので併せて読むと、面白いですね。
ダ・ヴィンチ 2016年12月号

異世界に行ったきりになる心配もあるけど、
私の場合、家族・友人・ロードバイクがあるから杞憂になるでしょう(苦笑




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