有川浩「塩の街」を読む ― 2008-06-09 23:59
有川浩のデビュー作「塩の街」を読了。電撃文庫として出版されその後、ハードカバーで出版された異色の本。
世界中に巨大な塩の物体が落下し、日本では8000万人の人々が塩に結晶化して死亡する。世紀末のなかで略奪、暴行が横行し、都会ほど被害は大きく、行政機能、マスコミ、通信網も崩壊状態になる。
両親を塩害で亡くした18歳の女子高生真奈と彼を助けた28歳の航空自衛隊パイロット秋庭。世紀末でなければ出会わなかった二人。そして二人が結ばれるのか、そして世紀末の中で、人々はどのような希望を持って生きていくのか。
スピード感があって、そして、男前(おっとこまえ)の小説だ。男前というのは男らしいということじゃなく、ぶれない自分なりの基準を世紀末にも貫いていくということ。だからそこには男女という性差は関係ない。
この小説の中で私が興味を惹かれたのは秋庭の高校の同級生入江。頭脳明晰で警察官僚となっているが、塩害のどさくさに自衛隊立川駐屯地の司令官にちゃっかりと居座っている。
圧倒的な不条理の中で入江が選択する価値観、そして秋庭がとる基準。どれも魅力的。
後半はちょっと甘々のラブストーリーになっちゃうけど、まぁそれもこの作者の魅力でしょう。
想像力と文章のスピード感。恐るべし、有川浩。
他の作品もしばらく読んでみよう。
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