吉田修一「横道世之介」を読む2009-10-15 22:58

横道世之介 今週は仕事が忙しいので、ちょっとポタリング的な読書をしています。ポール・オースター、村上春樹の翻訳本なども読書予定本として置いてあるが、ストーリー・テラーである吉田修一の最新作をまず読みました。

地方都市から東京の大学に進学した横道世之介(井原西鶴「好色一代男」の主人公と同じ名前)の大学1年の生活と彼を取り巻く友人,恋人の20年後が交互に描かれる。地方都市から都会に進学した青年が体験するであろう世界がそこに描かれている。懐かしいような、気恥ずかしいような世界だ。

読了すると、ほっこりした気持ちになる不思議な小説。人が人と出会うのは、偶然のようにみえて必然的なものもあるかもしれない。人とぞんざいに別れて、それが一生の別れとなることも多いし、憎しみや失望が数年続くこともある。 でもムダな出会いなんて、なかったんだろうなと最近は思う。日々思い続けたり続けられたりするより、どっかで懐かしい人であることが私たちが出会ってきた意味だったかなとも思う。

学生時代、あんなに1年が長かったのに、歳を経るにつれ、ウカウカするとあっというまに数年が流れていく。世之介のまわりの人々が、20年後に世之介をふと思い出すシーンは、どれも1980年代と2000年代の社会や彼らの変化が心憎いほどうまく描かれている。

20年後の世之介はどうなっているかは、ネタばれになるので自制するが、世之介の生きている世界は、きっと読者も生きた世界なんだと思わせるところが、吉田修一の小説のうまさなんでしょう。

次は、これを読む予定。
無理

しばらくはポタリング的読書です。


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