村上春樹超短篇小説案内2011-05-18 22:08

今日はすばらしい五月晴れ。
こんな日に仕事していていいんでしょうか、サイクリストは。

ここ数日、私的なことで失敗事が多く「集中力が散漫になっているな」と反省して、こんな本を読んでいました。
村上春樹超短篇小説案内―あるいは村上朝日堂の16の超短篇をわれわれはいかに読み解いたか

「集中力の散漫」と村上春樹の超短篇解読が関係あるん?という疑問はごもっとも。

心が浮ついたり、リアルと妄想の齟齬が生じたとき、私の場合村上春樹の短篇を読むことが解毒剤になるんです。心が落ち着き、本来のまっすぐな道が見えてくるような感じ。

村上春樹の長編小説は、「あっちの世界」に入り浸ってしまうので、元気なときでないとなかなか読めない。いちおう仕事人ですし。

その点、彼の短篇集は不可思議なものが多く、良質な嘘や直喩を味わうことができる。

この本で上げられている村上春樹超短篇リストは

「夢で会いましょう」
 夢で会いましょう (講談社文庫)

「カンガルー日和」
カンガルー日和 (講談社文庫)

「象工場のハッピーエンド」
象工場のハッピーエンド (新潮文庫)

「<村上春樹朝日堂超短篇小説>夜のくもざる」
 夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)

横断的に読みたいなら「村上春樹全作品1990~2000 第1巻」なんかもオススメ。
村上春樹全作品 1990~2000 第1巻 短篇集I

あらためて読み返していると「夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について」が、彼の良質な嘘と直喩を表している代表的な作品だなと思う。

わずか2頁の超短篇で

女の子が男の子に質問する。「あなたはどれくらい私のことを好き?」
少年はしばらく考えてから、静かな声で、「夜中の汽笛くらい」と答える。

という文章で始まる。

若い恋人達の間で交換される「どれくらい私のことを好き?」という当事者以外にとっては凡庸なできごとが、村上春樹の良質な嘘と直喩にかかると孤独の深さ故に物語が(それは人の営みであり小説でもあり)深い影響を与えることを読み取ることができる。

いいなぁ。
生きているのも悪くないなぁ。

超短篇はそんな作品がぎっしり。


ということで集中力の散漫さも緩和されたので、明日は有給をとってロードバイクで走ってきます。



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