穂村弘「絶叫委員会」を読む2010-05-18 23:00

歌人穂村弘さんの最新エッセイ「絶叫委員会」を読了。

絶叫委員会―天使的な言葉についての考察

私は詩作もしないし短歌も詠まないけど、歌人や詩人、そして写真家の文章を読むのが大好き。彼ら・彼女らの言葉にはシッカリとした灯りがともっているから。
新聞の組織言語とか、会社の先輩が若い後輩に語る処世術とか死んだ言葉がどれだけ巷には溢れていることか。
先の読める言葉に魅力なんかない。
うんざりする。

この本は穂村さんが街中で見聞きした言葉、過去に遭遇した言葉について
「町には、偶然に生まれては消えてゆく無数の詩が溢れている。不合理でナンセンスで真剣で可笑しい、天使的な言葉たちについての考察」をしたもの。

ともすれば聞き逃してしまいそうな言葉、ひっかかるけど忘却してしまう言葉、得心しないが流されていく言葉に対し穂村さん独特のユーモアとオチがあって、読んでいて思わずニヤニヤしてしまう。

ちょっと引用してみよう。

致命的発言(彼がつきあっている彼女に放った言葉)「妊娠してなかったらなんでも買ってやろう」ーそれを聞いた彼女のその後の行動の恐さといったら・・・

あるけどないもの「ウメボシノタネノケガ」「バナナの紐状のもの」
うーん、確かに梅干しの種には毛みたいなものがあるし、バナナをむくと皮に紐状のものがつく。あれって食べていいものだろうか。
皆、無意識に食べているんじゃないか。ちなみに私は蜜柑の皮をむいて食べる人がよくわからない。あれって、皮ごと食べるんじゃなかったけ。

美容室にて洗髪の時「おかゆいところはございませんか」って聞かれる。
最近は「気持ち悪いところはございませんか」って聞かれるらしい。
「いえ」しか回答できないのに、なぜこんなマニュアルがあるんだろう。

そうそう美容室やショップで客が入ってくるとスタッフが全員一斉に「いらっしゃいませ」というのは何故だろう。その分、集中力が途切れるじゃないかというのはアカンの?


などなど彼が切り取った言葉には豊穣さがある。

誠実さや論理性を競う言葉には、なにかしら胡散臭いものが漂う。

言葉の深呼吸のためにはこんな本も時にはよいでしょう。
毎日深呼吸していると、人とのコミュニケーションに齟齬が生じますが。

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