恋愛問答歌「回転ドアは、順番に」を読む2007-11-25 11:15

回転ドアは、順番に (ちくま文庫 ほ 20-1)
穂村弘/東直子さんの恋愛問答歌。恋愛の誕生から死までをふたりが短歌で詠んでいく。

恋の遭遇
「遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた」(東直子)

初めてのデート
「サンダルをおとしちゃったという叫び声を笑って海風のなか」(穂村弘)

初めてのSex
「熱帯夜全身汗にまみれつつあろんあるふぁを指環に墜とす」(穂村弘)
「くちびるでなぞるかたちのあたかさ闇へと水が落ちてゆく音」(東直子)

そして訪れる二人の間の軋轢
「好きになったばかりの頃というのは、相手の行動がすべてがよいものに映ってしまう、全肯定状態。でも、同じ行動が、ネガティブに感じられる瞬間がいつかきてしまう。 人間って、人間の心って、じわじわと腐ったりもするナマモノだから」(同書184頁、東直子)。

仲直りしたり、風邪で寝込んだりしながらも互いの存在が必要なものだとわかってくる。 そして二人で生きていこうと決める。
だが恋愛問答歌なんだから、やはり「別れ」が必要だったんだろう。二人はあらかじめ約束されていたように別れる。それは突然の事故や病気であったり、互いの家の問題だったり、心の乖離であったり千差万別であろうと別れがひとつの死であることには違いはないだろう。

そして時を経て、降り積もる時間を痛いほど感じることができる。
「砂糖水煮詰めて思う生まれた日にしずかにしずかに風が吹いていた」(東直子)

恋愛、それが狭すぎるとするならば人のこころの動きをくっきりと切り取った問答歌ですね。ある時は静かに、ワガママに、失望したり怒ったり。自作解説も興味深い。

いちばん好きな短歌は
「俺の熱 俺のうわごと 俺の夢 サンダーバード全機不時着」(穂村弘)
「うわごとで名前を呼んでくださればゆきましたのよ電車にゆられ」(東直子)

解説者と同じだけど、これは秀逸な問答歌ですね。


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