瀬尾まいこ「卵の緒」を読む ― 2006-07-12 22:07
「夕暮れでも海でも山でも、とことんきれいな自然と一人じゃないって確信できるものがある時は、ひとりぼっちで歩くといいのよ。」(瀬尾まいこ「卵の緒」P43)
瀬尾さんの初期の作品。この作品の中に、彼女のはっきりしたスタイルが見て取れる。
つまり「家族という器」を通して、人とのつながりを描いていく。
この小説は、いっしょに暮らす母とは血のつながりのない小学生の男の子が主人公。
瀬尾さんの小説には、おいしそうな料理・血縁に固執しない人との関係性が描かれる。
男の子の出生の秘密があきらかになる後半は、人とのつながりの不思議さと広さを感じ取ることができる。
ストーリーの持って行き方も、とてもうまい。
この作品のあとがきも秀逸。
この作品で描かれているニンジンのブレッドって美味しそう。
おいしいニンジンは、たしかに甘いんですよね。
この作品の中で、いちばん気に入った言葉は上記のもの。
「ひとりじゃないっていう確信」があるからこそ、私たちはひとりであることも恐れないのかもしれない。
コメント
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_ 猛読醉書 - 2006-07-18 15:29
第7回(2002年)坊ちゃん文学賞受賞作「卵の緒」を収録したふたつの中編小説集。それぞれ、ちょっと変わった家族の物語。ほんわりとして不幸なんだけれど暗くはなく、でも切ない。ひとつひとつのエピソードやセリフがうまく登場人物に親近感が沸きます。特に母親が逞...
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