27年の時間旅行2009-11-22 20:00

今日は寒波襲来で、さすがにロードバイクに乗る気になりませんでした。
雑誌等をパラパラ読んでいると、今月号のサイクルスポーツに「あの夏の日へ。30年の時間旅行」という記事がある。

1978年高校2年生のときに走った峠を30年後に当時同行した友人とともに走るという企画。当時と同じ場所を訪ね、当時とおなじポーズで写真を撮る。道はダートからアスファルト道に代わり、自転車もランドナーからロードバイクへ、そして彼ら自身がオジサンと言われる歳になっている。

この記事を読んでいると、1982年(昭和57年)にランドナーで琵琶湖1周したことを思い出した。当時私は28歳。仕事上の悩みでひどくエネルギーが低下しており、子供の頃に好きだった自転車に乗って旅行すれば人生変わるんじゃないの?と思い立って、自転車旅に出た。

ランドナーを購入しての初めての遠乗り。
Wレバー、トゥークリップにフロントバッグ。エネルギーが低下していることもあり1日80Kmほどしか走ることができない。
驟雨に遭って廃車のバス内で雨宿りしたり、泊まったユースホステルでは精神的な幼さが顕著で大学生に間違えられる。
往路に淀川堤防を走っていると、人なっこい野良犬がしばらく自転車のあとを付いてくる。土手で休憩している時にフロントバッグからお菓子を出して、犬に分け与える。当時から人には好かれないけど、犬には好かれたなぁ(笑
琵琶湖岸の里山。場所は忘れたけど、ここでも犬と遊んでもらっている。

琵琶湖1周から帰ってきても、当然ながら私の生活や生き方は激変したわけじゃない。そして仕事・結婚・子育ての中でランドナーに乗る時間もなく数年してこのランドナーも処分した。

そして27年後のいま私はロードバイクに乗っている。
ロードバイクだと琵琶湖1周は1日で走りきってしまう距離。そして淀川沿いには多くの高層ビルが建ち、あの時の人なっこい犬もいない。
でもロードバイクに乗っていると、10代の頃に感じた風の音、木々の匂い、そして青空の広さを感じることがある。
生きていく上に必要だと頑なに信じて、不要なモノ・役立たないモノとして依怙地に排斥してきた何か。そんな肩肘張った自分の横で「まぁ力抜いたらぁ」とあの時の人なっこい犬のようにそばにいるロードバイク。

ロードバイクはリアルの困難を解決しないし、アンチエイジングの道具でもない。

ただ
「あの夏の 数かぎりなき そしてまた たった一つの 表情をせよ」
(小野茂樹)

と短歌に詠われた「たった一つの表情」のように、私はロードバイクから見える街や人や里山の表情を慈しんでいきたい。


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