村上春樹最新短編「ドライブ・マイ・カー」2013-11-10 19:55

今日は雨なのでロードバイクにはとても乗れそうにない。
ということで西宮北口まで電車で近しき人とお出かけ。

西宮ガーデンズの飲食店は混んでいるし、そのわりにはあまり美味しい店はない。北口の昔からある店をいくつか立ち寄ってみたがなぜか満席。
彼女は西宮にある大学を卒業しているので、このあたりは学生時代からよく利用しているのだが、彼女も初めての昭和レトロなイタリアンに入ってみた。

ボクらは酒飲みなので麒麟ラガービール中瓶を2本あけて、スープ・魚料理・パン・ケーキ・コーヒーのランチ(1300円)を二人でいただきます。

今風のオシャレなイタリアンというより、どちらかというと洋食屋さんの味かな。
味付けがしっかりしていて妙な健康志向がないところがかえって潔いかもしれない。
想像していたよりはるかにボクの口には合いました。

食後、西宮北口のジュンク堂にて「文藝春秋」を購入。
文藝春秋 2013年 12月号 [雑誌]
村上春樹の最新短編「ドライブ・マイ・カー」が掲載されている。ボクはオヤジ系雑誌の文藝春秋や週刊「文春」「現代」「ポスト」などはいっさい読まない、読む記事がない。オヤジ系雑誌の上から目線、週刊誌の色ボケ傾向にはうんざりしますし。

で「ドライブ・マイ・カー」のざっくりした印象。
・文藝春秋に掲載されたのは、なんとなく納得。ある程度長く生きて、あんなこと・こんなことを経験した人には共感できるのではないかな。
村上春樹作品はリアリズムを主眼に置いたものと、パラレルワールドな想像を駆使した作品に大きく分けられると思う。最近話題になったこの記事などはそれを的確に分析していると思う。

村上春樹の「好き」「嫌い」はどこで分かれるのか? に関する一考察

今回の作品は「ノルウェイの森」や「多崎つくる〜」と同様なリアリズム傾向が強い作品でしょう。だからこの作品から村上作品に入ると、かなりの確率で「村上春樹の作品、あれ、なんやねん」ということになるかもしれない。
先日、歌人穂村弘さんの本を読んでいると読書傾向には「驚嘆」と「共感」の2種類があるのではないかと書かれていた。
短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために (小学館文庫 ほ 4-3)

 短歌が人を感動させるために必要な要素のうちで、大きなものが二つあると思う。それは共感と驚嘆である。共感とはシンパシーの感覚。「そういうことってある」「その気持ち分かる」と読者に思わせる力である。(略)

 共感=シンパシーの感覚に対して、驚嘆=ワンダーの感覚とは、「いままでみたこともない」「なんて不思議なんだ」という驚きを読者に与えるものである。


乱暴に区分けすると、驚嘆の読書体験は若々しく、共感の読書体験は老成している。
村上春樹作品も「世界の終わりと〜」などは驚嘆であり、「ノルウェイの森」は共感の物語ではないか。

村上氏は京大で行われた公開インタビューで(ボクも幸運に参加できたが)〈小説家の仕事〉について次のように語っている。


 (徐々に)魂のネットワークのようなものをつくりたい気持ちが出てきた。みんな自分が主人公の複雑な物語を、魂の中に持っている。それを本当の物語にするには、相対化する必要がある。小説家がやるのは、そのモデルを提供することだ。

 誰かが僕の本に共感すると、僕の物語と「あなた」の物語が呼応し、心が共鳴するとネットワークができてくる。僕はそれが物語の力だと思う。

ここでは「共感」という言葉が使われているけど、今回の短編にはその傾向が強いと思う。

・だからこの作品が「文藝春秋」に掲載されたのは、ある意味妥当かもしれません。
それにしても村上作品以外に読む記事がない・・・ 人は年老いていくにつれ「驚異」より「共感」に精神構造が移行していくものかもしれない。だから我田引水だけど、ロードバイクに乗って自然や風や神社、名も無き林道に惹かれていくようになる。
昔のボクなら路傍の石仏に頭を垂れることなど考えられなかっただろう。同時に「共感」のみになるのは精神の動脈硬化を起こしているかもしれないのだ。
自分の気に入った以外ものについて「眼をつぶれば世界は存在しない」と思うことに繋がっていくかもしれない。精神ののびやかさは確実に減退している。

この作品が「an an」に掲載されなかったのは(考えられないけど)、至極真っ当だったことでしょう(苦笑)。

ちなみに「an an」に掲載された村上ラジオは大好きな作品です。

・今回の「ドライブ・マイ・カー」という題はビートルズの曲からヒントを得ているようだ。

Drive My Car-The Beatles - YouTube

作品を読んで曲を聴いてみると、なるほどなという感じ。
「ノルウェイの森」も不思議な歌詞だけど、これも同じ感じ。

この作品を読む前に、近しき人がいきなり「月曜にポール・マッカートニーのコンサートがあるけど行きません?」とおっしゃっていた。
Netで検索してみるとS席(16,500円)に空席があるらしい。
ボクはビートルズの熱心なファンでもないし、さすがにその値段はいかがなものか、そして月曜は仕事を休む都合がつかないので丁寧にお断りしました。

でもなんとなく不思議な縁も感じますね。

自転車ブログと3台目ロードバイクについても書こうと思ったけど、その記事は別に書きましょう。




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