奥田英朗「マドンナ」を読む ― 2006-01-03 23:47
奥田英朗の「マドンナ」を読む。
40代の中間管理職の男性が主人公の短編集。
若い部下の女性に懸想し、勝手に失恋してしまう(マドンナ)、大学に進学せずにダンスの道に進む息子、横暴な上司に悩む父親(ダンス)、筋を通すと言うことが組織とぶつかってしまうことを味わう男性(総務は女房)、合理的・聡明な女性上司とのとまどいを描く(ボス)、そして年老いた父親を思う(パティオ)など。
直木賞を受賞した「空中ブランコ」や「イン・ザ・プール」の作品よりは、毒はうすめ。トンデモ精神科医伊良部のような強烈なキャラクターは出てこない。
みなオヤジ特有のグジグジさがある。
まあ、サラリーマンを主題にもってきたところで、毒はうすめになるんでしょうが。
でも最後の「パティオ」は、佳品だなあ。
あまり人気のないショッピングモールのパティオで日々読書する老人。おひょいに似ているという設定。主人公は、田舎にいる父とその老人を重ね合わす。
この老人が、かっこいいんだなぁ。
もたれない、でも、拒絶もしない。「アローンとロンリーは似て非なるものだ」(同書298頁)。
こんな老人になりたい。
「マドンナ」は、うーん、セクハラとの相違が不明。
見た目は中年、中身はいまだ少年(帯)は、いいわけにならん。
少年は少年、中年は中年。
ちゃんと区切りは、したほうがよろしいかと。
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